【人事担当インタビュー】株式会社吉野家 / 経営を任せられる外国人材を育てる 1 / 2
https://www.yoshinoya.com/company/
<取材先>
株式会社吉野家 SSC本部 採用 課長 関 直道 さん
今回取材させていただいたのは、皆さんの身近な飲食店である「株式会社吉野家(以下吉野家)」さんです。吉野家は、1899年に魚市場に個人商店として誕生して以来、長い歴史を持つ牛丼屋(飲食店)です。日本において、外食産業が増え始めたのが1970年と言われています。それを考えると、本当に長い歴史を持つ、日本を代表する外食チェーン店の一つです。また、海外展開も非常に早く、1975年には米国に「YOSHINOYA」1号店を開店されています。従業員数は、アルバイトも含めると、1万人近い人が働いています。そんな歴史のある、皆さんにとって身近な吉野家の外国人採用や実際にそこで働く元外国人留学生にインタビューしてきました。
■SSC本部 採用 課長 関 直道 さん
創業して約120年、100年を超える歴史がある企業です。
「吉野家」について教えてください。
吉野家は創業して約120年、100年を超える歴史がある企業です。もともと魚河岸の個人商店として始まりました。当時から、忙しく働く人に対して、美味しいものを、はやく、安く提供したいという想いがありました。そのコンセプトが多くの人に評価され、チェーン店として広がっていきました。ちなみに、当時は今の牛丼とは異なり、白滝などいろいろなものがのっていました。また、店舗内から外が見えるようなガラス張りも、当時からです。常連さんになると、こだわりの食べ方があり、店頭に姿が見えた時点で、オーダーを予測して作るようにしていたためです。そのようにして、より早く商品を提供できるようにしていました。
外国人採用を始めた背景を教えてください。
外国人採用自体は、2年半前から親会社の吉野家ホールディングスが、担当チームを作って取り組んでいます。社長の考えで、社内の人を多様化させる、ダイバーシティ化の一つでした。具体的には、女性や外国人留学生など、多様な人が活躍できる環境を作っていくことです。ただ、外国人に関してはビザの問題もあるので、慎重に進めています。2020年のオリンピックまでに、次第にビザの要件が緩和される可能性もありますが、それを待っていたら遅いと考えています。そのため、段階的に留学生の採用をやっていこうと、取り組んでいます。
一昨年4月に1期生が入社し、昨年は2期生が入社し、そして今年は3期生が入社します。吉野家ホールディングスは海外でも積極的に事業を展開しています。2014年には、ASEANを統括する拠点ができました。そして、海外の店舗で働く人材は、現地で採用しており、日本にいる留学生が海外で活躍するのは、日本で様々な経験を積んだ後になります。また、反対に、中国で採用された優秀な人材を、日本の本社で業務を学ばせる等の取り組みもしています。今後帰国してキャリアを積むかは、その方の考えにもよりますが、国内外での人材交流は今後も継続していきたいと考えています。
外国人留学生の採用基準について教えてください。
語学力は大切だと考えています。お客様と十分な会話ができるかは重要な要素です。そのため、現在は、留学生の母国を含めた大学を卒業した、JLPTのN1以上の方がメインになっています。採用では、面接を重要視しています。日本人学生同様に適性試験も行いますが、日本語の問題もあると思いますので、面接の方が重要です。日本人よりも1回面接を多くし、お人柄含めて、面接で見極めたいと考えています。
採用にいたった方は、誰もが入社してから店舗業務を経験します。そして、キャリアを積んで、マネジメントや本社部門へ異動します。ビザが取得できても更新できなければ、日本で活躍し続けることはできません。私たちは5年先も、留学生の皆さんに活躍してほしいと考えています。そのため、留学生の方々の採用基準は少し高くなっています。ですので、吉野家にいる留学生は優秀な方が多いです。新入社員は、入社後3ヶ月はトレーニングセンターで研修を受けていただくのですが、成績トップは日本人ではなく、留学生になることもあります。
外国人留学生を受け入れてから課題はありますか?
アルバイト社員の定着率は良いのですが、正社員には課題があります。吉野家の店舗は24時間365日営業しているので、深夜の時間帯の勤務など、体調管理を含め、入社して最初の頃は慣れるまでに時間がかかると感じています。また、勤務の時間帯によっては「お祈りの時間が確保できない」という話も耳にします。今まさに課題は何かを精査していますが、日本人にとっての当たり前が、留学生にとっては当たり前ではないことを理解したいです。そのうえで、一つ一つ改善をして、外国籍の方にとっても働きやすく、活躍しやすい環境を作っていきたいと考えています。
海外と日本をつなぐパイプ役になってほしい。経営を任せられる人材に成長していってほしい。
留学生に期待していることは何ですか?
いずれは海外と日本をつなぐパイプ役になってほしいと考えています。これまで日本への留学生は中国人の方が多かったですが、今はベトナムの方が増えてきていますし、ASEANは海外展開の重要な戦略拠点のひとつであり、今後は他のASEANの方も増えてくると思います。ただ、優秀な方は国籍問わず優秀ですので、日本をつなぐパイプ役にとどまらず、経営を任せられる人材に成長していってほしいです。
吉野家で働く魅力について教えてください。
吉野家ホールディングスには、吉野家以外にも別のブランドがあります。新人研修のときなど、別のグループ会社の人と交流することができます。いずれ別のグループ会社の店舗でキャリアを積むことも可能です。キャリアに関していうと、「キャリアオーディション」という公募型の社内異動希望制度があります。これは、自ら希望する部門に対し業務提案し、採用されれば配属される制度です。専門職を志す方は、是非ともチャレンジしてほしいと思います。いくつかの店舗で店長を経験して、キャリアオーディションにチャレンジすることができます。留学生の皆さんの中から、「アフリカで挑戦したい」という声が出てきてもよいと考えています。私たちはハングリーな方を求めていますし、そのような方にチャンスを提供したいと思います。もし安定を求めるとしたら、それは吉野家ではないかもしれません。
留学生の皆さんにメッセージをお願いします。
私たちは、笑顔が素敵な方、元気な方を求めています。やはり、お客様が喜んでいただいている姿を見ることにやりがいを感じてもらいたいですし、そこにやりがいを感じられるからこそ、忙しくても明るく元気に笑顔で仕事ができるのだと思います。また、吉野家で何にチャレンジしたいのかを考えてほしいです。何か目標を持つことで、厳しいときも乗り越えられると思いますし、吉野家としても、一緒にはたらく人の夢を一緒に実現させていきたいと考えています。
ありがとうございました!
次回は、入社2年目で最近店長として店舗管理をする元留学生のインタビューです。外食産業に対する想いや日本のサービスについて、苦労ややりがいについてお話いただきました。お楽しみに!
続きはこちら:「日本のサービス精神を学び、吉野家ブランドを世界に伝えたい【株式会社吉野家】」
(インタビュー・記事:田村 一也、佐藤 亮介)