【人事担当インタビュー】株式会社グローバル・デイリー / 外国人材だからできる仕事がある 1 / 2
<取材先>
株式会社DACホールディングス 人事部 採用課 次長 尹 日洙(ユン イルス) さん
株式会社DACホールディングス 社長室 広報課 堀岡 絵美(ホリオカ エミ) さん
株式会社グローバル・デイリー メディアソリューショングループ 次長 張 蕙字(チヨウ ケイウ) さん
今回取材させていただいた株式会社グローバル・デイリー(以下、グローバル・デイリー)は、DACグループにおいてグローバル広告事業を展開している企業です。同社は、コミュニケーションを介して世界中の価値と世界中の人をつなげることで、感動を創出することをミッションとしています。もともと2003年に訪日外国人誘致プロモーション事業として始まり、2013年12月にグループ内独立を経て、グローバル・デイリーとして法人化しました。訪日外国人観光客プロモーションの課題解決を中心に、世界に向けて日本の魅力を発信しています。海外メディアとのタイアップやインフレンサー招聘(しょうへい)事業などの他に、自社ソリューションとして約51万人のファンがいる「JAPANKURU」プロジェクトを運営しています。従業員数は、55名+1犬【※1】で、26名が外国籍社員です。
【※1】会社で飼っている犬がいます
今回は、DACホールディングス/人事部の尹(ユン)さん、広報課の堀岡さんとグローバル・デイリー/メディアソリューショングループの張さんにご協力いただきました。まず初めにインタビューさせていただいたのは、人事で採用や労務管理などの仕事をされている「尹(ユン)」さんです。
世界に日本の魅力を伝え、訪日観光客を増やすことで日本の活性化を目指しています。
DACグループについて教えてください。
DACグループは、1962年に創立され、2017年に55周年を迎え、「総合広告事業」「人材ソリューション事業」「観光ソリューション事業」「グローバル広告事業」の4つの領域で、それぞれ事業会社があります。
(1)総合広告事業(街の看板、テレビCMなど) →株式会社デイリースポーツ案内広告社
(2)人材ソリューション事業(求人の広告に特化)→ 株式会社ピーアール・デイリー
(3)観光ソリューション事業(地域・観光産業のプロモーション)→ 株式会社デイリー・インフォメーション
(4)訪日外国人向けの広告事業 → 株式会社グローバル・デイリー
これ以外に、4つの事業領域で培ってきたノウハウを活かして、社会貢献・地域創生にも取り組んでいます。その一貫で、北海道余市郡仁木町にワイナリーを建設中です。「ワインのPR」「外国人観光客の誘致」「雇用の創出」など、4事業の集大成として取り組んでいます。それに加えて、「一般社団法人DAC未来サポート文化事業団」では青少年の健全な育成を目的に、絵・写真・作文コンクールなどを行っています。
どのような経緯でDACホールディングスに入社されたのですか?
私は、前職でグローバル採用の支援をしていました。具体的には、日本企業のグローバル新卒採用の一環として、韓国でのキャンパスリクルーティングです。ピーアール・デイリーとはグローバル採用事業で外注関係にあり、その後「一緒にやらないか?」と声をかけられて、中途入社しました。そして、今年4月から人事の仕事をしています。
どのような背景から外国籍の方の採用が始まったのですか?
グローバル・デイリーではインバウンド事業がメインになるため、世界に日本の魅力を伝え、訪日観光客を増やすことで日本の活性化を目指しています。留学生を初めて採用したのは2010年です。当時は、たまたま採用した学生が留学生だっただけで、戦略的に外国籍の方を採用していませんでした。しかし、外国の方に日本の良さを知ってもらうには、「日本人から見た日本の良さではなく、外国から見た日本の良さを伝えなければ、外国の方に日本の良さは伝わらない」というコンセプトから、戦略的に外国籍の方の採用を始めました。そして今ではグローバル・デイリーの社員数は、55人中ちょうど半分の28人が外国籍社員です。このように、ダイバーシティの観点から外国籍の方を採用したのではなく、事業上必要だったので外国籍採用が始まりました。そのため、株式会社グローバル・デイリー以外のグループ会社には、外国籍社員がほぼいません。そこは課題だと思っています。
元気な声を出して、良いサービスをすることで、お客さんが喜んでくれることがやりがい
採用活動で、これまでの取り組みとギャップはありましたか?
まず、採用に関しては現場の意向が強いです。新卒は全社的に管理しているのですが、中途ですと時間がかかり非効率なので、リファラル(社員からの紹介)がメインです。新卒で外国籍の採用はウェルカムなのですが、募集には課題を感じています。日本と海外各国で就職活動の仕方が異なるので、日本の就活スケジュールを知らない留学生が多いです。留学生に採用活動の情報を伝えられていないのは、もったいないと思っています。日本では、就職活動の大きな流れができあがっているので、留学生に就活スケジュールを周知することが大切だなと感じています。
外国籍社員を増やすにあたって課題だと感じていることはありますか?
少し大きなテーマになってしまいますが、「外国籍社員を採用する理由・採用しなくてはいけない理由が明確にあるかどうか」だと考えています。グローバル・デイリーは、外国籍社員でないとできない仕事があるので理由が明確にあります。「本当に外国籍社員を増やさないといけないのか?」という議論から始めるべきだと思います。
外国籍社員採用をするかしないかの話よりも前段階から検討していく必要があるのではないでしょうか。「採用目的」「採用してどう活用していくのか」、事業戦略から検討していく必要があります。「日本企業だから日本に適応しなさい」というのも正しいのですが、そうであれば外国籍社員は必要ではないかもしれません。もともと外国籍の方が持っている良さを殺してまで適応させてしまうのは疑問があります。
仕事だけでなく、仕事の進め方や会社の文化をより発達させていくために採用することもあると思います。例えば、「中国人のような自己主張があったりした方が良いよね。」など、仕事以外の切り口で外国籍社員がいたほうが会社として活性化するという考えも一つではないでしょうか。
他の事業会社とは違い、驚くほど自由
外国籍社員が多いグローバル・デイリーの雰囲気は他の事業会社とは違いますか?
他の事業会社とは違い、驚くほど自由です。型にはまらないのではなく、型にはめれらないのかもしれません。(笑)フォーマットにそって仕事をするのが一般的だと思うのですが、グローバル・デイリーは自由です。一部フリーアドレス【※2】ですし、社内のどこでも仕事ができるので自由度は高いです。
【※2】仕事をする席が特定の場所に決まっているのではなく、自由に席を使うことができる仕組み
マネジメントは大変ではないですか?
今はだいぶ慣れたと思いますが、外国籍社員を受け入れる日本人マネージャーが苦労したのではないかと思います。日本人マネージャーは、一般的に管理したがる傾向があると思います。「報連相(ほうれんそう)【※3】」が典型的だと思いますが、ある社員が「やる」と言っているのに、なんで途中でちょくちょく報告しなくてはいけないのかということもありました。最後の最後で「できません」と言われたくないから、マネージャーは途中で状況を聞いているのですが、その意図を伝えてあげないとトラブルになります。日本人は、報連相が当たり前だというのがスタートなので、その時点でかみ合っていません。(笑)グローバル・デイリーのマネージャー層は、現在では、それを理解しています。
【※3】「報告」「連絡」「相談」の略で、日本企業におけるマネージャーとメンバーのコミュニケーション内容
外国籍社員のマネジメントに関する研修はあるのですか?
グローバル・デイリーの研修は、チームビルディングがメインです。座学より体を動かしたり、チームとして何か一緒に取り組むことで信頼関係を作っています。社内だけでなく、社外でも海外の方とお付き合いをすることも多いです。そのため、日本的なやり方が通じないと理解するためのコミュニケーション研修を行うことが必然だと思います。
「ご家族に社員の最大の理解者になっていただき、今後の一番の応援者になってほしい」
外国籍社員が働きやすくなるために何か取り組んでいることはありますか?
DACグループ全体で「仕事参観」という取り組みがあります。希望した社員のご家族を呼んで、会社と自分たちの仕事を見てもらう取り組みです。費用は原則として会社負担です。一昨年の新卒のほとんどが外国籍だったので、グローバル・デイリーでは海外からご家族を呼びました。「ご家族に社員の最大の理解者になっていただき、今後の一番の応援者になってほしい」といコンセプトで実施しています。また、月に1度社内報を社員のご家族全員に送っています。写真を多く掲載することで、外国籍社員のご家族にも、自分の子供が日本で活躍している様子を見てもらえていると聞きます。
実は、日本人より外国籍社員のほうが離職率が低く、定着していると思います。辞める人もいますが、ネガティブに辞めていくことはありません。お互いのベストを考えて合理的な理由で辞めていくケースがほとんどです。コミュニケーションを取ったうえで、双方納得しての退職が多いです。
今後、どのような人事戦略で事業を進めていきますか?
外国籍社員の国籍を増やしながらも日本人社員との比率は、半々を保ち続けていく方針です。法人営業はクライアント様が日本語を話すため、やはり日本人社員の方が適性があります。一方で、コンテンツ作成は外国人独自の異文化の目線が必要だと思いますので、役割を分けてバランスを保ちたいと思います。
ありがとうございました。
前はこちら:「外国人目線で日本の魅力を海外へ発信【株式会社グローバル・デイリー】」
(インタビュー・記事:田村一也、若林親正)